ベガルタ仙台特集Vol.5 ~復興のシンボルとして~ 11-13シーズン

仙台のプロサッカーチーム「ベガルタ仙台」が2019年に創立25周年を迎えました。
地元密着のチームとして25年歩んできた足跡を特集していきます。
第5弾は手倉森監督の11~13シーズンを振り返ります。

~第5章 東日本大震災からの復興の光~

11シーズン


(11シーズン ベガルタ仙台 メンバー )

手倉森監督4シーズン目。
守備をベースとした「堅守速攻」スタイルに更に磨きを掛けるため、昨年、期限付き移籍で加入した赤嶺が完全移籍に移行。02、06W杯を経験し、巧みなポストプレーとボールの受け方に定評のある元日本代表 FW 柳沢 敦を京都サンガから、
前線からの献身的な守備と抜群の決定力を誇るFW マルキーニョスを鹿島アントラーズから獲得。
また、精度の高いキックを得意とするMF 松下 年宏をFC東京から期限付き移籍で獲得し、最前線でボールを当てた時に収めることが得意なFWをベースにしたチーム作りに着手。
肝心の守備陣には、CB・ボランチ共に質の高いプレーで回りを鼓舞するDF 角田 誠を京都サンガから、韓国 城南一和から、対人プレーに定評のあるDF 曺 秉局を獲得し、中央の守備をより強固に纏めた。
開幕戦では、サンフレッチェ広島を相手に、豊富な運動量をベースにしたカウンターを仕掛け、チーム全体のベースが上手く進んでいる手応えを感じた開幕戦の約1週間後に東日本大震災が発生。
所属選手も避難所生活を強いられるなど、チーム活動を一時休止せざるを得ない状況となる。さらに、追い打ちをかけるように、前線のキーマンとなるはずだったマルキーニョスが震災の影響で退団するなど、
明らかにチームの状態は悪くなる一方だった。活動再開したチームは、練習後に被災地支援に出向き、災害ボランティアを行うなど、地域に寄り添った活動を展開していく。
そして、リーグ再開を迎えた、4月23日の川崎フロンターレ戦では先制点を許すも、FWとして出場した太田を足がつりながらも気持ちで決めた同点ゴール、終了間際には鎌田のヘディングシュートが決まり、逆転勝利を収める。
試合後の手倉森監督は「ベガルタが復興の光に」と涙ながらにこの勝利の喜びを伝えると、続く、ホームの浦和戦では1-0と勝利し、浦和戦初勝利を収め、チームはその後、アウェイ清水戦まで6勝6分と12戦無敗をキープ。
また、シーズン中に京都サンガからパンチのあるシュートと独力でゴールまで突進できるMF ディエゴを期限付き移籍で獲得し、前線に力強さを加味させ、最終成績は14勝14分6敗の4位過去最高成績を収めると共に、総失点数は
リーグ最少の34試合中25失点と1試合1失点以下に抑え、先制した試合は無敗であった。この頃から「仙台=堅守」と言うイメージが定着してきた。
シーズン終了後に、堅守を支えたDF曺 秉局がジュビロ磐田へ、出場機会が少なくなったMF 高橋 義希がサガン鳥栖へ、FW 中島 裕希はモンテディオ山形への移籍が決定した。

太田 曺 秉局 角田 誠 松下 年宏 柳沢 敦
ゴール後に感情を
爆発させる太田
曺 秉局 角田 誠 松下 年宏 柳沢 敦

 

12シーズン


(12シーズン ベガルタ仙台 メンバー )
手倉森監督5シーズン目。
昨年の堅守を支えたCB 曺 秉局のジュビロ磐田への移籍に伴い、セレッソ大阪からスピードあるカバーリングと後方からのビルドアップに長けたCB 上本 大海が加入し、昨年の「引いて守る」守備に「ハイライン」の中盤でのプレスを加味した守備を展開。
また、ヴァンフォーレ甲府から左右両サイドバックをこなせる内山俊彦、中国スーパーリーグ 陝西宝栄からFW ウィルソン、仙台大学から指定選手だった奥埜 博亮、流通経済大学から武藤 雄樹、筑波大学から原田佳輔、新潟明訓から石川慧、盛岡商業から藤村慶太など若手が入団し、ベテランと若手をバランスよく獲得。
序盤からハイラインでのショートカウンターを展開し、FW ウイルソンがフィットしてくると、開幕から9試合負けなし(7勝2分)でシーズン序盤から首位に立つなど、優勝争いの中心となる。
とりわけ、左サイドに流れて起点を創るウイルソンとPA内での抜群の決定力を発揮する赤嶺の愛称は良く、中盤戦までのベガルタのショートカウンターで重要な役割を担った。
中盤以降、守備の要であった上本が負傷離脱した辺りから、不用意な失点が増え、勝ちきれない試合が続き、サンフレッチェ広島に首位を明け渡すも、勝ち点で並び得失点差で2位まで追いすがり、白熱した優勝争いを繰り広げた末に、33節 アルビレックス新潟に敗れたため、準優勝となるも、昨シーズンの4位から更に順位を上げる事に成功。
32節時点で年間3位以内が確定し、手倉森監督が就任時の「5年後にACLに出場」という目標を達成し、J1準優勝、初のACL出場という大きな希望の光を被災地へ届けることとなり、「震災復興の光」となったシーズンであった。
シーズン終了後に、長らく左SBを支えたSB 朴 柱成が退団し、日本代表にも選出されたMF 関口 訓充が浦和レッズへ移籍するなど、J1昇格に貢献した2人がチームを離れることとなった。

ウイルソン 上本 大海 奥埜 博亮 内山 俊彦
ウイルソン 上本 大海 奥埜 博亮 内山 俊彦

 

13シーズン


(13シーズン ベガルタ仙台メンバー )
手倉森監督6シーズン目
また、これまでのカウンター主体のサッカーからポゼッションを意識したサッカーにも挑戦し、昨年までのベースだった「4-4‐2」から「4-3-3」へフォーメーションへの変更も行うなど、ACL挑戦と共に新しいスタイルへとチャレンジしたシーズンでもあった。
初挑戦したACLはFCソウル(韓国)、江蘇舜天(中国)、ブリーラム・ユナイテッド(タイ)と同グループになり、ブリーラム・ユナイテッドにホームでの初戦を引き分けてしまい、その後の江蘇舜天、FCソウルとのアウェイ2戦は1分1敗と勝ち点1のまま、半分を折り返した。
ホームで強豪FCソウルを1-0で下すものの、アウェイでのブリーラム戦で、またも引き分けとなり、決勝トーナメント進出には届かなかった。

一方、リーグ戦はACLとの過密日程による選手の疲労と、新たなチャレンジである「4-3-3」によるポゼッションサッカーへのシフトチェンジが上手く進まなかったことと、左SB候補であった和田のシーズン中の移籍と蜂須賀のケガから、急遽、サンフレッチェ広島から SB 石川 大徳を獲得し、穴を埋めたが、昨年のような勝負強さが戻らず、不安定な戦いが続き、13位でシーズンを終了。

手倉森監督は、リオ五輪のU23日本代表の監督に就任するために、この年を持って退任。また、長らくチームを最後尾で支えてきたGK 林 卓人がサンフレッチェ広島へ、両SB、ボランチとポリバレントに力を発揮した MF田村 直也が東京ヴェルディへ、多彩なキックで中盤を支えたMF 松下 年宏は横浜FCへと移籍。
ベガルタ仙台の1つの時代が幕を閉じ、新たなるチャレンジが始まった。

石川 直樹 蜂須賀 考治 佐々木 勇人 へベルチ 石川 大徳<
石川 直樹 蜂須賀 考治 佐々木 勇人 へベルチ 石川 大徳

 

まとめ

本記事では、手倉森監督の就任から後半の11年から13年までを振り返ってみました。
次章では「セカンドステップへの挑戦 ~渡邉 晋監督 誕生~」をご紹介いたします。

写真提供 ベガルタ仙台

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